大喬の恋愛備忘録

大喬の恋愛備忘録

「出逢いを切り開く力」を使って理想の人と結婚するために

一目惚れしたあの子

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大学四年生の頃
心地よい四月の香を
風が優しく運んでいた
ちょうど
僕の住んでいた街も
春の訪れを告げる桜が
咲き乱れていた

 

 

 

当時就職活動の
重圧に追われ
恋愛とは無縁の生活を
送っていた僕は
近所のスーパーで
生まれて初めて
一目惚れをした

 

 

 

完璧・・・

 

 

 

彼女はそのスーパーから
委託された清掃業者のようで
清掃服を纏っていた
おそらく僕と
同い年くらいであろう
緑色の清掃服から
覗かす透き通るような白い肌と
よく手入れされた
艶のある栗色の長い髪に
僕は目を奪われた
清掃服が浮いて見える
その不釣り合いな
そのコントラストすら
魅力的に見えた

 

 

 

自分の心で
起こっている感情が
なんなのかも
よくわからなかった
昔から一目惚れなんて
馬鹿にしていた僕だから
この感情が
一目惚れというものなのかと
気づくには
少し時間がかかった

 

 

 

また会えるのかな?
お店の店員さんだったら
そのお店にいけば会えるけど
この場合はちょっと特殊だ
次にいつまたこの場所に来るのか
それすらわからない
気が付くと彼女の顔が
頭から離れなくなっていて

 

 

 

それからはお店に行くたび
彼女に会えないかなと
願いながらの日々が続いた

 

 

 

ある日
お店の出入り口に見たのは
おばあちゃんと楽しそうに
談笑している彼女の姿

 

 

 

その時の彼女の
少女のようなあどけない瞳
楽しそうな雰囲気や
優しく明るい笑顔に
より一層彼女に
釘付けになってしまって
彼女の魅力に引き込まれた

 

 

 

もう見ているだけでは
耐えきれなくなって
彼女に話しかけたくなって
次に会えたら連絡先を渡そう!
そんな想いは
当時の消極的な僕ですら
ここまで動かすほどのものだった

 

 

 

それからは鞄に
連絡先を書いた紙を入れて
いつでも彼女に
渡せるようにした
お店に行くたびに
ドキドキするようになった
彼女に会えたら何から話そうか
色々な事を頭の中で
シミュレーションしているような
そんな日々が続いたけど

 

 

 

あの日から彼女を
お店で見かけることは
なくなった

 

 

 

やりきれなかった
でもいつかまた彼女に
会えるんじゃないかという
期待もあった

 

 

 

結局そんな気持ちを
抱えたまま
僕は学校を卒業し
その街を出ることになった
卒業後は生まれ育った
田舎に帰ることになっていた

 

 

 

もう彼女と会えることはないだろう
そんな心の声が聞こえてきた
引っ越しの日に
大量の荷物を載せた
トラックの助手席から
どこにいるのかも
わからない彼女に向かって呟いた
ありがとう」と
さようなら」は
高速を走る
けたたましいエンジン音と
荷台の大きな荷物が
こすれ合う音で
かき消されて
しまっていったんだ

 

 

 

こんな経験の中で
僕は自分自身を
呪ったことが二つあった

 

 

 

当時の僕は女性に
声を掛けるには失礼すぎるほど
醜い外見をしていながら
それを改善する努力を
しないどころか
加速させるような
生活を送っていたこと

 

 

 

当時の僕はというと
「こんな外見で声を掛けて
不愉快な思いをさせてしまわないだろうか
そんな不安が常に
つきまとっていたし
なんでこのタイミングで
こんな子と出会ってしまったんだろう
とチャンスが来ているのに
準備が整っていないもどかしさを
身勝手ながら感じていた

 

 

 

そして何より一番は
全部で二回も彼女を
見かけていたにも関わらず
彼女に声を掛けられなかったこと
声を掛けるチャンスがあったのに
知らない女性に声を掛けて
仲良くなるなんて行為は
とんでもなく
別の世界の話だと思っていた
だから彼女を見かけた時も
すぐに行動に移せなかった
何よりそんな勇気と
自信もなかったんだ

 

 

 

それからは
藁人形を夜中に
釘で自分の心に打ち付けながら
田舎で過ごしていてた

 

 

 

あの子笑顔が胸を離れなくて
気が付けば地元も
交遊関係も全部投げ出していた
あの子と出会った街は
神奈川県のとある片田舎
縁があれば
また出会えると信じながら
誰も知り合いも居ない
東京の街に一人で出てきた

 

 

 

東京に出てきて
随分時間が過ぎた
道ゆく人波の中に
あの子の姿と重なる子を
探してしまう僕がいる
これだけ女性が居て
好きな顔をしている女性は
少なくない
でもあの子のように
雰囲気から
目を奪われるような女性には
なかなか出会えないと
改めて実感した

 

 

 

準備に時間は掛かったけど、
もう藁人形を
打ち付ける必要はなくなった僕は
東京の繁華街で
ストリートに立っている

 

 

 

今でも清掃服の妙齢の女性を
見るたびに思い出す
名前すら聞けなかったあの子
きっと一生忘れることはないだろう
でもネガティブな感情は一切ない
好みの女性に
声を掛ける事を
あの子が教えてくれたから

 

 

 

あの子は今何を想って
何を感じながら
過ごしているんだろう
これから来る新しい季節を
誰かと生きるのかもしれない
どうか幸せに
過ごせていますように
好みの子であれば
あるほど声を掛けられる力
こんなかけがえのない
人生の宝物をくれてありがとう

 

 

 

あの時まだ咲いていなかった
神奈川の街の桜のつぼみは
あの時に声を
掛けられなかった僕のようで
あの時咲いていた
神奈川の街の桜のつぼみは
あの子の魅力を
彩っていたようで

 

 

 

これから毎年東京の街に
咲く桜のつぼみは
あの子の思い出を抱いて
ストリートに立つ背中を
押してくれるようで